精神障がい者の地域移行支援

 日本の精神病院の入院者数は世界で突出して多く、しかもその65%が1年以上の長期入院で、精神病院の閉鎖性が社会的な問題となっています。東京都は国に先駆けて精神障がい者の地域移行を進めてきていますが、2012年では、都内の精神科病院には未だに11,760人が長期に入院しているのが現状です。

 9月議会での一般質問に対し東京都の答弁では、1年以上の長期入院者の退院率29%以上と目標値を定め、コーディネーターを配置し、退院に向けた働きかけ等を実施しているとのことですが、地域移行はなかなか進んでいません。

11月3日、国立市の大学通りで「くにたち市民まつり」

 長期入院していると生活力を失い、病院生活へ依存し地域生活への復帰を諦めてしまう人が多いと聞いています。その人らしい地域での生活をイメージできるように支援し、地域移行・地域定着するには、病院と地域との調整をするコーディネーターや、自らも入院経験をもち地域で暮らすピアサポーターによる働きかけは、大きな効果があります。

 そこで、ピアサポーターの活用を進めていけるよう都に求めたところ、都は、長期入院者の地域生活に対する不安の解消や、退院に向けた意欲を高めるため、今後も、ピアサポーターによる活動を活かし、長期入院者の地域移行を進めると答弁しました。

 一方、地域移行を進めるとしながら国では精神病院の病棟の一部を居住地に活用する議論がなされています。それに対し当事者からは、病院と同じ建物内や敷地内にある限り入院と何ら変わらず「地域生活とはいえない」と反対の声が挙がっています。

 都内には精神科病床のある病院は115。そのうち1年以上の入院者がいる病院は、約70病院あります。今後さらに、入院者本人に寄り添った支援を行い、地域の受け皿づくりに向けて、当事者に寄り添い、市区町村との連携で住居やサポート体制をつくるために、都へ、さらなる支援を求めました。

 “街での暮らしをつくる” は国分寺市の「社会福祉法人はらからの家福祉会」が出版した本の表紙に書かれたことばです。6月に「はらから活動開始35周年ならびに法人設立15周年祝賀会」に参加しました。
 9月には、国立市の「就労移行支援事業ピアス」を見学してきました。ピアスの運営母体である社会福祉法人多摩棕櫚亭協会は、棕櫚の樹に囲まれた小さな一軒家を借りて1987年に共同作業所を始めたそうです。精神病院からの退院者を一人でも多く迎え、地域で活き活き暮らして欲しいと就労移行支援事業を中心にした就労トレーニング、就労プログラム、就労相談を3本柱とした通過型施設として運営されており、全国でも先駆的な存在です。
 どちらも30年近く前から国や自治体に先駆け精神障がい者の地域移行を支援し当事者に寄り添った受け皿づくりを根付かせてきた団体です。