多様性が社会を強くする! ありのままの自分を尊重し合う暮らしのまち・東京へ

都議会議員として3期12年。人生に例えると小学校入学から高校卒業までにあたる、振り返れば決して短くない公務生活でした。その間、国政は、2009年9月から約3年の民主党政権、第二次安倍内閣、菅内閣へと続き、都知事は石原、猪瀬、舛添、小池都政へと変遷。激動の時代とも言えるでしょう。

任期を終える機にあたって振り返り、主な取組み等をご報告させていただきたいと思います。

2011年3月11日。都議会第一回定例会最終日、それまで不出馬をうわさされていた石原知事が、本会議場で突如として4期目の知事選出馬を表明。その驚愕の直後の午後2時46分、東日本大震災が発災。さらに、東京電力福島第一原発事故が発生しました。避難される人々への支援、受入れに取組むとともに、都内の公園や学校給食等の放射能測定を求め実現しました。また、原発の是非を問う都民投票条例を求める署名に市民の皆さんとともに取組み、脱原発、再生可能エネルギー拡充を訴え、さらには、防災計画等に女性、子どもの視点を盛り込んできました。

一方、世界中を震撼させた大災害、これに次ぐ未曽有の原発過酷事故を引き起こした当事国にも関わらず、2016年五輪招致失敗(2009年10月)にも懲りず、都は、膨大な税金を投入し2020年東京五輪を招致しました。「復興五輪」という名のもとの招致に、大変、違和感を覚えました。当時、福島県や宮城県等を視察した際、避難生活が続き、復興もままならない中で招致を望む人はほとんどいなかったからです。しかし、開催は決定(2013年)、コロナ感染拡大による1年延期、そして2021年、収束が見えない状況下にあってさえ開催されました。複雑な思いです。生活者ネットワークは、今後も経費や意思決定過程の情報公開を求めていきます。

市民の生活は、大震災、原発事故、そしてコロナ禍の中で困窮し自殺者が増えるほどの苦境にあっています。しかし、政府も東京都も現場や現状に即した支援や対策には程遠い。いかに政治が市民生活とかけ離れているか。生活困窮は、個人の責任ではありません。社会の責任として取り組まなくては、だれも救われない。

生活者ネットワークは「政治は生活の道具」と掲げています。生活者ネットワークの存在意義を高め、政治を身近に引き寄せ、生活課題を解決する政治へと変えていく原動力にならなくてはならないと改めて実感しています。

 

2021年3月26日「東京都こども基本条例」成立

 

生活者ネットワークが東京政策の最重要課題に「子どもの権利条例」を掲げたのは1993年。以来30年余、子どもの権利保障と自治体の役割を定める都条例を求め続けてきました。

2021年3月26日、ようやく都議会第一回定例会で「東京都こども基本条例」が成立しました。

東日本大震災では多くの子どもたちが親や家を失いましたが、子どもの視点からの支援は不十分でした。学校や家庭だけでなく、遊び場や安心できる居場所の確保、相談したり話したりできる友人や、それを全面的に受け止める大人の存在など、子どもの生活全般への目配りが欠かせないにもかかわらず、大人の生活の復旧や復興が優先されました。

コロナ禍では、2020年2月27日、全国一斉休校が一方的に発令、通知されました。子どもたちへの説明は皆無、学校現場における十分な準備もできないまま、学校で学ぶ権利、友だちと遊ぶ権利を制限されました。ステイホームにより、家庭が必ずしも安心安全な場所ではない子どもには、虐待、面前DV、性被害などが起きています。SOSをあげられず孤立し、自ら命を絶つ子どもが現実に増えたことをデータが示しています。子どもの権利を無視した一方的な決定は、あってはなりません。

「こども基本条例」は、今後、子どもの意見表明と施策への反映、子どもに寄り添う相談体制、権利侵害や不利益を受けた場合に迅速に救済を図り、回復を支える子どもコミッショナーやオンブズパーソン制度を講ずるべく規定しています。東京都には、この体制づくりをする責務があります。そして、都の責務をチェックし、この条例を実効性あるものにしていくことは、生活者ネットワークの使命です。

2019年11月1日、都庁議会棟会議室で開催された、国連子どもの権利条約批准25年記念シンポジウム。子どもの権利条例東京市民フォーラム・ネットワークが主催し、司会を都議山内れい子がつとめた。このシンポジウムが、後日、東京都こども基本条例の制定へとつながることになった

 

 

子ども・若者に突き動かされたジェンダー主流化、そして気候危機

 

多様性を認めあうことの重要性が、私の信念となったきっかけがあります。

2016年1月には、第18回市民と行政の協議会(※)「東京都における性的指向および性自認に関する課題解決のために」が開催され、多くの若者も駆けつけました。当事者や支援団体からは、LGBTQの子どもが教師や保護者の無理解のために孤立し苦しんでいる現状が報告されました。LGBTQの約7割が自死念慮を抱き、そのピークは小学校高学年から中高生という衝撃的な調査結果も報告され、まさに切実な声でした。ありのままを尊重しあい、多様性を認めあうことがいかに必要か、ずっしりと響きました。

200人を超える参加があった、第18回市民と行政の協議会「東京都における性的指向および性自認に関する課題解決のために」。総合司会を務める都議山内れい子。2016年1月27日、都庁Q

 

その後、都ではLGBT等への差別を禁じる人権尊重条例が成立、基本計画も策定され、専門相談窓口も設置されましたが、具体的かつ実効性のある取り組みは不十分です。ジェンダー平等、多様性の視点から、今ある政策すべてを見直すジェンダー主流化を進められるのは生活者ネットワークです。

「エネルギーで地域経済をまわす」をテーマに開催された第19回市民と行政の協議会。司会を務める都議山内れい子。2018年2月9日、都庁議会棟会議室

 

2019年、スウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんの行動を発端に日本中の若者が声を上げ始めたことです。世界とつながりながら、気候危機を訴えグローバル気候マーチを開催、気候上昇を1.5℃までにする必要性、そのために2050年までにCO2排出ゼロを実現することを求めています。東京で活動する「Fridays For Future Tokyo」の若者たちは、東京都に気候非常事態宣言を発するよう都議会に請願。生活者ネットワークが若者と都議会をつなぎました。残念ながら、結果は継続審査。都議会は判断を避けました。しかし、その後、若者の声は直球ではないものの、都の気候危機行動宣言、ゼロエミッション東京戦略につながりました。

150カ国以上で同時開催された「グローバル気候マーチ」に参加する、都議山内れい子。2019年9月20日

都議会議員の役割は、市民との対話であると考え、地域に根ざせるよう努力してきました。拙いことが多かったと思いますが、子ども、若者、高齢者、障がい者、外国にルーツのある子どもや人、さまざまな人に支えられ、政策に取り組んでくることができました。ありがとうございます。

東京・生活者ネットワークは、各地域の生活者ネットワークとつながり、調査し、議論し、政策実現に向け、今後とも頑張っていきます。

「もし、生活者ネットの議員が地域に、都議会にいなかったら!」、民主主義も市民自治も行き詰まる。多様な人たちがありのままの自分を尊重し合う暮らしのまち・東京へ。市民や地域と政治をつなぐのは生活者ネットワークだという思いを強く刻み、皆さんに届けていけるよう、一市民として活動してまいります。

 

※都議会には、生活者ネットワークの提案により、議員がコーディネートして市民と行政が同じテーブルにつき、都政にまつわるさまざまな政策課題の解決に向けて建設的に議論する「市民と行政の協議会」がある。1993年に始まり、東京の林業やエネルギー問題など協議の場を作ってきた。

 

 

生活者ネットワークは実現しました!

  • 子ども食堂や誰もが集えるインクルーシブな地域の居場所づくり
  • 福祉避難所への看護師などの人的支援
  • 農地の買い取り予算計上
  • 性犯罪被害者への24時間対応支援
  • 犯罪被害者支援条例成立
  • 人権条例(SOGI、ヘイトスピーチ)成立
  • 子どもの虐待防止条例成立
  • 性教育の手引改訂
  • やさしい日本語の活用
  • トイレの洋式化、女子トイレ・だれでもトイレの増設
  • 2050年CO2実質ゼロのゼロエミッション東京戦略策定(気候危機行動宣言)、都庁版RE100
  • 再エネ導入のための補助を拡大
  • 都の会議でのペットボトル禁止
  • マイボトル推奨と水飲み栓設置
  • ブロック塀の生け垣化への補助
  • 障がい者差別解消条例成立
  • 液体ミルクの防災備蓄
  • 紙おむつのリサイクルの研究を支援する
  • 河川から海に流出するプラスチック、マイクロプラスチックのモニタリング調査を行う
  • 東京都こども基本条例成立