小雨の森は、いのちをしっかり育んでいました。

5月11日、おとなの社会科見学「山内れい子と行く、新緑ツアー」報告

養沢の森・・・鳥居の奥には森を守る氏神さまのお社が。
養沢の森・・・鳥居の奥には森を守る氏神さまのお社が。
5月11日、天気予報は1週間前から雨。実は、内心、晴れ女とまでは言わないにしても、「私は雨女ではない」と思っていました。でも予報は当たり、その日は朝から小雨。正直、ちょっと残念でした。
9時に国立駅南口に集合。参加者の皆さんと観光バスに乗り、一路、あきる野市にある養沢(ようさわ)の森へ。
バスの中では、建築家の長谷川敬さん、樋口佳樹さんから、東京の森林の現状をお話しいただきました。ちょっとご紹介します。
「森林は雨水を溜め、私たちの生活に必要な水を賄うとともに、水害を防ぎ、動植物の生態系を養い、森に入れば私たちに元気を与えてくれます。CO2の吸収も森の大切な働きです。このような森林の多面的な働きは私たちの生活になくてはならないものです。
しかし、この森林を育て守る林業は生業とする人も、後継者もほとんどいないほど衰退し、壊滅状態になっています。
また、人工林は適切に手入れをしなければ、健全に育てることはできません。いくら補助金を注ぎ込んでも、山に住み、働くひとがいないままでは、産業としてなりたたず、町にとっても重大な問題にもなっています。」

東京の森林は、東京の面積の約4割。地域別にみると、多摩地域の森林面積は67%。そのうち私有林63%、都有林15%、市町村・財産区有林12%、国有林10%。民有林の6割がスギやヒノキの人工林で、所有者の高齢化や、後継者の減少で、手入れがされず、太陽の光が入らない暗い森林になり、水源の涵養、土砂災害の防止、生物多様性の保全などの機能が低下し、問題になっています。

あきる野市に着くと、祖父の代から森を守り、育てていらっしゃる池谷キワコさんが出迎えて下さいました。池谷さんは、まちに住む人たちにも、こんなに素晴らしい森林があることを知ってもらいたい、森の恵みを感じ、理解を深めてもらいたいと「東京・森の学校」を仲間とつくりました。
キツツキの大きな穴を見ながらの森歩きは、とても気持ちがいいものでした。小雨もむしろ、森の自然の姿として受け止められ、美しく、たしかに今、いのちが育まれている、未来につながっていることを感じました。離れた場所の雪害で倒れてしまった木に、「なかなかあそこまで行って手入れをすることができない」とおっしゃる池谷さんの言葉に、山の管理の難しさを教えられました。
森の木々を前に、川のせせらぎを聞きながら食べたおにぎりのおいしかったこと!池谷さんがつくってくださった、採れたばかりのタケノコの煮物も最高でした!

次に訪れた製材所では、社長さんが、製材の工程を説明してくださいました。木材協同組合もいまでは減少し、残っているところで協力して頑張っている。住宅用の建材は外国産の安い木材や修正材が8割も占めていること。多摩の森林の木はちょうど木材としての林齢になっているが、需要が少ないこと。また伐採しても運び出す環境整備がないこと。値段は決して高くなく、スギは、1㎥当たり(立木約6本)の価格が2000円くらいで、このままでは、大根6本の値段と変わらなくなることなど、多摩の林業の厳しい現実を伺いました。
 東京都は、今後10年の「森づくり推進プラン」をつくり、副題に「豊かな都民生活に貢献する森林の整備・保全と林業振興」とうたっています。食の地産地消同様、多摩産材を地域や自治体、個人で活用する必要があります。そのためには、都は、率先して多摩産材をキャンペーンしていかなくてはなりません。
水道局でも、荒廃した民有林を購入し、将来にわたって水源地域を良好な状態で保全し、水道水源林の機能を最大限発揮できるように、今年度から民有林のモデル購入を始めます。生活者ネットワークとしても、これを支援していきたいと考えます。 
帰りのバスの中で、参加者の皆さんが、森林を守り育てていくために私たちもそれぞれにできることを考え、やっていきたいと感想を話してくださったのが印象的でした。市民の皆さんの「行政にだけ任せてはおけない!」というおもいを受けて、それに負けないよう、私は、都としてやらなければいけないことを考え、提案していきます。
参加者の皆さん、ありがとうございました!
次回を、楽しみにしてください。